でぃするだいありー?

そんな気はないんだれど、でぃすっちゃってる。 でぃすでれ?

読物 『原発・正力・CIA』

 アマゾンの奥地で蝶が羽ばたき、それがさまざまな自然現象と連鎖を重ねて、カリブ海で巨大ハリケーンになるという。歴史もそういうものだろう。

 「正力マイクロ構想」の挫折が、ノーチラス号の完成、アトムズ・フォー・ピース演説、第五福竜丸事件、アメリカの対日心理戦、保守大合同などと次々と化学反応を起こし、原子力平和利用の日本への導入という歴史的出来事を生み出した。

 筆者が魅せられたのも、この歴史的出来事を生み出す連鎖の複雑さ、面白さだ。読者に伝えたかったのもこれにつきる。特定の組織や人をことさら非難しよう、その秘密を暴きたてようという意図はないし、そのように書いたつもりもない。

 原発、正力、CIAはよく似ている。その存在を賛美することはできないが、かといって否定することもできないということだ。

 個々の日本人がどんなに節電に努めたとしても、日本の電力消費量が下がることはまずないのだから、これからも正力の導入した原発に対する依存は強まると見るべきだろう。

あとがきより

人類の素晴らしさ、愚かさを高らかに歌い上げた傑作ゲーム『Civilization IV』に幾度めかのドはまりをして、読書が停滞してしまった個人的事情はさておき。

同ゲームでは、「政治体制」が『普通選挙』であっても「労働体制」が『奴隷制』を取り得ること、『環境保護主義』が「経済制度」に含まれるなどのコモンセンスが散りばめられており、それがあまりにデカルチャーだったためか、昨今、頻繁に更新されるコモンセンスとつい対照してしまうクセがついてしまった。

日本への原発導入が政治的判断によるものだということは噂に聞いていたが、噂に聞いたものよりも遙かに低度な実態であったらしいことを本書は語っている。本書はCIAが公開した機密文書を背景にしており、『巨怪伝』とは異なった切り口である。本書に比して、『巨怪伝』はいささかハードボイルドタッチであったという印象だ。