でぃするだいありー?

そんな気はないんだれど、でぃすっちゃってる。 でぃすでれ?

読物 『馬賊で見る「満洲」―張作霖のあゆんだ道』

 昔、ある家に18人の兄弟がいた。家計がきわめて苦しかったので、母親はこういった。
「おまえたち兄弟は、みな家を出て生計を立てなさい。一年後、私に会いに戻っておいで。おまえたちがどんな道理や技を学んだか見たいから」
 兄弟の何人かは一年間家を出て、困窮している人が多く富める人は少ないこと、富める人は楽しく飲食しているのに貧しい人はひもじい思いをしていることをいたるところで知った。
 彼らは家に戻って母親にいった。
息子「お袋、世間は不公平だよ!」
母「どうしてそういうの?」
息子「金持ちは金持ちすぎるし、貧乏人は貧乏すぎるからだ」
母「それでおまえたちはどうしたいの?」
息子「世の中にはどんな仕事もあるけれど、金持ちを殺して貧乏人を救う仕事はないんだ!」
母「おまえたちがひとたび人を殺せば、世間では私の息子と認めてくれなくなるだろうね」
息子「俺たちは顔にひげを描くさ。そうすれば誰も俺たちが誰だかわかりゃしないさ」
 そこで彼らはおのおの上手に化粧して、金持ちを殺し貧乏人を救った。ゆえに世間では彼らのことを「髭子」と呼んだ。即ち後の十八羅漢である。

P.204

張作霖
中学校の歴史の教科書に唐突に現れたその名には、満州事変という歴史の変節を語る代名詞的な位置付けという印象を与えられるにも関わらず、どのような人物で、なにを成し遂げ、なぜ暗殺されねばならなかったかは不明であったように思う。
暗記力に乏しい我が身の、歴史への興味とは裏腹な歴史という勉強への嫌悪がそう思わせているだけで、世間一般では異なる認識なのかと思えば、本書巻末の著者の、1969年生まれの著者の言葉によれば、そうでもないらしい。
馬賊出身であるという彼の立身出世はどこか、チェーザレ=ボルジアを髣髴とさせる。マキャベリを思い起こさせる王永江という個人的には初見の人物と組み、日清露などの勢力の間を巧みに渡り歩き、志半ばにして関東軍に暗殺された。

バーレーホー
白麗花。
ひとり馬賊
性別不詳の、美貌の若者。黒い髪を長くのばし、蒙中折衝のような衣装をまとう。
徒手格闘術の達人であり、天才的な射手であり、また巧みの騎手である。愛銃はモーゼル、神の恩寵を一身に受けたようなキャラクターであるといえよう。
『機神兵団』に登場する架空の人物。
原作となる小説は ・⌒ ヾ(*´ー`) ポイ だが、岡昌平のコミック版は絶品だった。
唯登詩樹によるビジュアルを見てみたいところである。

個人的には、馬賊の印象はそれくらいしかない。字面どおり、馬に乗った盗賊という印象である。
本書に依れば、いわゆる馬賊とひとくくりにされているもののなかに、地方豪族の守備隊や、郷土の自警団的なもの(保険隊という)もふくまれているという。張作霖は最も「馬賊」的な匪賊に一時身を置き、名士に見出されて保険隊に所属し、戦乱の中を立身していった。
本書が参考文献とした「実在の日本人が馬賊に参加し、フィクション作品として世に出した」という『馬賊になるまで』に依れば、馬賊というものの一側面として西洋的な傭兵団のイメージも持てる。以下の引用は、その構成である。

 匪賊には頭目(当家<タンシア>)・副頭目以下、おおむね以下のような人々がいるという。

1.頭前人、崩頭=10~14名の班の班長。これに対して一般の部下は「家口」と呼ばれる。頭前人は頭目・副頭目の指令で班を動かす。
2.糧台=炊事係。民衆からの食糧調達も担当する。
3.八門先生=易者。頭目の下問に応じて占う。
4.軍需=会計係。金銭の収支、武器弾薬の収支、被服供与などを担当。
5.水餉=歩哨、つまり見張りの責任者。
6.砲(あるいは包)頭=行軍、攻撃の陣頭指揮と全団の誘導。
7.医者=負傷者の治療をするが、内科の場合はアヘンしか使わない。
8.放線=密偵。集団内に起居することはまれ。
9.拉線=道案内。転々とするに従い変更し、時には現地住民を拉致して強要する。
10.票房子頭=人質の管理を担当する。
11.稽査=集団内の内通者、略奪品隠匿者などを取り締まる。随時頭目が任命し、集団内では誰が担当しているのかわからないようになっている。

《中略》

――この編成に従って略奪品の分配率も異なっており、頭目を10とすると副頭目が5~6、砲頭と水餉が3、糧台が2.5、頭前人が1.5~2、普通の「家口」が1、新入りの「家口」は0.6~0.8となっていたという。炊事係が班長よりも序列が上というのは興味深い。それだけ「家口」を「食べさせる」ことが重要だったのだろう。なお以上の分配率は銃器を所有している場合で、他人から借りている場合は所有者に四割渡すというのが慣例だったという。

P.199

浅学にして本書の内容を云々することはできないが、巻末に掲載された膨大な参考文献のリストだけでも、この道のインデックスとして大いに有用であろう。