読物 『ソフトウェア』
1983年に発表されたとは思えない先鋭さと、当時らしいエスエフ感をないまぜにした読後感がある。20年くらい前に読む機会が訪れていたけれども、表紙で避けてしまっていた。当時読んでいたらどんな印象を抱いただろうか。
攻殻について、ビジュアル的にはギブスンの、根っこの部分は本作品の影響があるようだ、などと思っただろうか。
GAの着想はここからかもしれないなどとは思いもしなかっただろう。
構成は、壮大な話をくだらなく語る『マクロス』シリーズと似ている。
エスエフはネタ勝負という時代は確かにあり、この作品もその時代に属するものだと感じられる。だが、それを前面に押し出してはいない。多様なネタのエッセンスがちりばめられているが、作者自身はあまり熱心にそれを用いようとはしていない。あるいは意図的にそうしているのか。
ともあれ、そんなことを思ってしまうあたり、どうでもいいところを深く掘り下げすぎる昨今の風潮に、我が身も毒されてしまっているのだろう。