読物 『魔性』
ずっと気になっていたドラマがあった。
絞首刑にされる女囚。
遺骨を抱いて女囚の故郷を訪れる男。
その男の前に現れた馬上の老人。
老人は、幼女を同乗させている。
そんなシーンと、赤のイメージだけが記憶にあった。
随分と前に、「思いだせないドラマを尋ねるスレ」みたいなところで尋ねたときには回答は得られなかった。自分なりにいろいろ調べてみても分からず、つい先日、またぞろ気になって調べてみたところ、似たようなスレに回答を見出した。
木曜ゴールデンドラマ、『魔性』。
1984年2月23日放映。主演、浅丘ルリ子。
原作、一色次郎『魔性』。
ドラマを再視聴する術はないと思え、原作を読んだ。
拘置所で刑の執行を待つ久乃眉子の心情と、なぜそのような境遇に陥っていったかを書き連ねていく様は巧みである。異常殺人事件があたりまえとなった昨今の創作事情はよく知らず、というのもそういうのを毛嫌いしているからなのだが、そういう性癖の持ち主をして、小さくよくまとまっていると感じさせた。
ひとつだけなじめなかったのは、場面転換の手法である。ひんぱんにあり、空行も、それを知らせる記述もないので混乱させられた。このようなやり方になにか意味はあるのだろうかととりあえずは受けいれてみたが、ハードカバーで紙面に余裕のある体裁であることを加味すると、物語がシナリオのレベルから抜けきっていないのではないかという印象に落ち着いた。
ドラマで見知った印象とは異なる結末、どうやらドラマは脚色が加えられたようだ。記憶通りなら、ドラマの方がインパクトが強い。
叶うなら、もう一度見てみたいものだ。