でぃするだいありー?

そんな気はないんだれど、でぃすっちゃってる。 でぃすでれ?

読物 『マージナル・オペレーション01』

――戦争が荒っぽい対話の一手段であるのなら、今回の敵は話の分かる奴だ。仲良くやりたい。

P.245

芝村裕吏は、我が身にとっては前科者である。このような存在は、短からず人生をこなしていれば誰しもが持つであろう。我が身にとっては秋山瑞人も然り、菊地秀行も然りである。

前科者となる前には嗜好ないし至高の対象である。この段階では、新作に対する姿勢は異なる。事前に知っていれば待ち遠しいし、事後に知ったならば迷いもせずに買う。

だが、前科者となった後にはそうではない。本作品の場合、まず気になるのはタイトルだ。『01』とある。これは単品では完結していない可能性をほのめかすもので、迂闊に手を出すと渇き苦しみながら生きることになるし、成仏できない因縁となる恐れがある。

つまり、本書を購入する前段階で葛藤があったということだ。

芝村裕吏の前科は『Return to Gunparade』、PSのゲーム『高機動幻想ガンパレード・マーチ』の販促企画であろうWeb小説である。販促という目的は十分に果たしただろうし、無料で読ませていただいていたのだから、続きがでなくても我慢するしかない。たとえそれが、尋常な我慢ではなかったとしても。

そう自分に言い聞かせながら、購入に至った。

前科者と対峙するためには、欺瞞が必要になるのだ。

手元に届いた郵便物は薄かった。価格から想像していた厚さではない。開封してみると、B6判サイズというヤツだろうか、最近よくあるサイズのコミックそのものが出てきた。

ただし、コミックなら二冊買える。

この時点でマイナス2ポイント。

書を開く。余白が非常に多い。

余白で儲けられなくなるから、電子書籍化のノリが悪いのかもしれないと勘繰りたくなる。

我が身は、文章主体の書籍で文字が少ないとフラストレーションを感じるタイプのスタンド使いである。マイナス3ポイント。

紙質が悪い。ひょっとしたらいいのかもしれないが、手触りが好みでない。

洋書のペーパバックとまでは言わないが、国内品ではそれに準じるような印象。もっとも、昨今のコミックスも似たような具合の、あまり好みではない紙を使い出しているようなので減点にはしない。ギョーカイ全体のマイナスだ。

個人的な、文章作品における最大の評価点は、文章に含まれる情報密度である。情報密度が適当である場合、ほぼ間違いなく文章は上手い。40ページ強で済ませられるものを250ページ以上にしたような文章商品は下の下である。なくてもよい情報ばかりでうんざりする。

さて、読者によってはプロットに肉付けしただけであろうと感じられるかもしれない本作品の文章は、我が身には非常に心地よいものだった。昨今では、これを感じさせてくれる作家はあと一人しかいない。

1260円、261ページ。安い買い物であった。読み終えるのがもったいない作品だったが、我慢しきれず、ついつい読み終えてしまった。

十案ほどの中から編集者に選択された企画は、一ヶ月で上梓に至ったという。

全三巻の予定、早く続きが読みたい。

久々に調べてみたら、『Return to Gunparade』の続きがあった。

こちらも相変わらずで堪能させていただいたが、いつになったら完結するんか喃。