でぃするだいありー?

そんな気はないんだれど、でぃすっちゃってる。 でぃすでれ?

読物 『虎よ、虎よ!』

「お金は慈善事業に寄附するの、フォーマイル?」
「とんでもない。私のスローガンはご存じでしょう。熱力学には一セントもやらない、というわけですからね」

P.191

 オリヴィア・プレスタインは上座の席についていた。この美しい白子のプレスタインの令嬢はご機嫌をとっている崇拝者にとりかこまれていた。彼女は不思議な、おどろくべき盲目だった。普通の可視ベクトルよりはるかに下の七千五百オングストロームから一ミリの波長の赤外線しか見ることができなかった。彼女は熱波、磁場、電波を見ることができる。彼女は赤い放射能の背景に反射する有機光線の不思議な光のなかで崇拝者たちを見るのだった。

P.211

原題" TIGERTIGER!"。

物語の面白さとは別に、疾走感というものがあることを体感したのは1990年代後半のことだった。実際にそれを感じたのは作家で一名、作品で一つ。秋山瑞人と、『RETURN TO GRNPADARE』、そして新たに、本作品ないし著者のアルフレッド・ベスターが追加された。かねてより作品の存在を知りながらも手に取ることはなかったのだが、若いときに読んでいたら、今のような読後感を得られはしなかったかもしれない。

当初の印象は、なんぞこれwなスラップスティックだった。
宇宙に存在する居住施設の増設にセメントが使われたり、真空中でダイナマイトを爆発させたりしている。エスエフなのに。しかしながら、それも韜晦であるに違いないと思わせるなにかがある。
読み進めるうちに、個人的に既知としている作品の種であることに気づかされた。『ニューロマンサー』『キャプテン・スーパーマーケット』『ハイペリオン』『銀河ヒッチハイクガイド』『AKIRA』、おサイコさん、などへの、影響ないしは捧げられたオマージュが見て取れる。一冊の本の中にこれほど多くのネタが散りばめられていることに驚きを禁じ得ない。

現時点で、本年度最高の一冊。