バルタン修行
何人と尋ねる流行があるのだろうか。
世間の流行には疎い身ゆえ、わからない。
稽古開始直前、ここ久しくなかった「何人?」攻撃を久々に受けた。
問うたのは小二男子。我が流法に従って切り返す。
何人に見えますか?
「日本人」
わかってるじゃないですか。
「で、何人?」
ぬ・・・
こういうとき、世代を超越した話題を提供してくれる円谷プロに感謝せねばならない。
バルタン星人です。
この子には、まだ、このネタは使っていない。
小二男子、うきゃうきゃと大喜び。
「世界征服とかできるじゃーん。で、なにしてるの?」
今はキミを誘拐する作戦に従事中です。
手をバルタンにして襲いかかる素振りを見せる。
小二男子、嬉しそうな叫び声をあげて逃げる。
ところで、我が身は先週末、髪を切った。バリカンで、4mmに。
整列をかけたところに、件の小二男子、再び来たる。そして、問うた。
「何人?」
時として、小学校低学年生とのやりとりはエンドレスに陥ることがある。
以前は挫けそうにもなったが、だいぶ、慣れた。
何人に見えますか?
小二男子、両手をチョキにして、
「バリカン星人!」
不覚にも笑った。少年よ、なかなかやるじゃあないか。
負けてはいられない。
バルタンはそうじゃないねん。こうするねん。
人差し指と中指をくっつけ、薬指と小指をくっつけ、中指と薬指のあいだに間隙をつくる。小学生の頃身につけた、不随意運動を随意化することによって成せる技を披露してみせた。
整列しはじめた拳士たちが、そろって真似し始める。誰一人として、できない。
期せずして。
下は小二から、上は31歳まで、そろってバルタンを練習する様は、一種異様であった。