でぃするだいありー?

そんな気はないんだれど、でぃすっちゃってる。 でぃすでれ?

読物 『スーパーボディを読む』

芸能と武術の関連について知見を得たのは確か、隆慶一郎の作品からである。

花の慶次』から『一夢庵風流記』へ、ハマってまず柳生モノを一通り読んだ。その中に、石舟斎と世阿弥に交流があったことが記されていたように思う。一道を極めた者は、互いに通ずると。

本書は著名人の身体運用を、著者が自らの目で我流に分析したことを綴っている。マイケル・ジョーダンタイガー・ウッズと共に頻出する名は坂東玉三郎だ。

個人的に胴体の動きについて初めて瞠目したのは、去年か一昨年か、滅多に見ないTVでやっていた特集で、國母和宏の動きを目にしたときのことだ。空中で姿勢を制御する氏の運動は、胴体を巧みに使ったものだった。スノーボードは一度しかやったことがなく、勘所など全く持ち合わせていないが、それでも分かる身体操作に見入ったものだった。

氏は一時期物議を醸した人物だが当時すでにそれは過去のこととなっていた。何故に今さらと思ったものだが、プロのスノーボードライダー(今はスノーボーダーといわないのか)として活躍しているという。スノーボードにかける姿勢は真摯なものであり、個人的な理由からスノーボーダーを敵視する我が身をしても、感得させられるものがあった。

今、様々な方面で胴体の運動が注目を浴びている。

これまでに触れた幾つかの資料によれば、どれも観念や感覚的なものであるという印象が強い。

獲得したものを表現しようという意図は伝わるが、どのように獲得できるものなのかが伝わってこない。観念や概念は重要だが、基本レベルにまで落とせないものは、我が身のような愚鈍な者には理解不能なのである。

伊藤昇氏が提唱する「胴体力」は、胴体は「丸める・反る(前後)」「伸ばす・縮める(脇)」「捻る(回転)」の三つの動きしかしないといい、それらを向上させることによって「股関節のとらえ」を確立すれば、人生の普遍的な場面でも有用な身体の能力を取り戻せる、というものである。現代人は胴体が持つ力を十分に活用しておらず、むしろ低下させている、本来持つ能力がありながら未開発のままであるという。

主張は十分にシンプルである。方法についても、入口は非常にわかりやすく具体的である。

肩や背中の凝りが、胸部や腹筋に悪影響を与えているという自覚を得て数年、「胴体力」がいうところの「伸ばす・縮める」の動作を数日繰り返して、確かな効果を感じている。特に、腰の張りが感じられなくなった。

同様の運動はこれまでも行っていたが、十分に適当ではなかったことになる。

非常に有用なうえ、簡単で、間違っても身体を重大に損ねることはないように思えるので、さっそく稽古に取り込んでみることにした。武術に即適用できる動きを含んでいるので、勘所があれば、この簡単な運動を行うだけで、つかめることもあるだろうと思う。

詳細については、 『天才・伊藤昇と伊藤式胴体トレーニング「胴体力」入門』よりも分かりやすいので、まずは本書を一読するがよいと思われる。

一つ残念なことは、鉄球を用いた方法について本書に詳述があるように見受けられたのだが、ほんのさわりだけで詳しいことは書かれていない。

経験者の言によれば簡単なものではなく、身体を損ないかねないというので、ただやみくもに鉄球入手に走るのはとりあえず止めておこうと思う。