でぃするだいありー?

そんな気はないんだれど、でぃすっちゃってる。 でぃすでれ?

読物 『真剣師小池重明』

 約束の場所に姿を見せないので不審に思った彼女がアパートへ来てみると、関と小池が徹夜で黒ずさんだ顔を突き合わせて盤面を睨み合っている。頭にきた彼女がヒステリックな声をはり上げる。
「私と将棋とどっちが好きなのよ」
 関は盤面を凝視しながら、唸るように答える。
「そんなわかりきったことはいうな」
 小池が、将棋が好きに決まっている、と盤面を睨んでいえば関も、そう、将棋のほうが好きなんだ、と盤面に視線を向けたまま口ずさみ、彼女は、ワッと泣いて部屋から飛び出していく。そのあと二人は差し手を続けて、小池が、「女を泣かせちゃいけませんな」といえば関が、「そう、女を泣かせちゃまずい」と受け答えする。

P.104

「お前な、可愛い娘のことを思って、これからはチンチロリンだけはやめろよ」
 と、私が思わず声をつまらせていうと、小池は、
「あれから、改心してチンチロリンなんて一回もやっていません。ドボンだけにしています」
 と、すすり上げながらいった。
「ドボンて、何だ」と聞くと、「ちょっと、チンチロリンに似た面白いバクチなんです」というので私は受話器を耳に当てながら尻餅をつきそうになった。バカの番付ができればお前は大関、間違いなしだ、と怒鳴って私は電話を切った。

P.277

 とにかく、面白い奴だった。そして、凄い奴だった。

P.321

将棋の天才、化物、魔剣使いと呼ばれ、プロをして異様な特殊感覚の持ち主といわせた男。
だが、ロクデナシの人生を歩んでしまった男。

夢枕獏が、なにかの短編かエッセイか、あとがきだかで、その死を嘆いた人物がいた。著述に名を出すことは避けていたが、間違いない、小池重明のことだ。
感想は、

 とにかく、面白い奴だった。そして、凄い奴だった。

最後の、この一文に尽きる。

団鬼六の著作を読むのは初めてのことだが、コクがあって良い味わいである。ピンクな作家、としか印象がなかったが、つきあってみようと思う。