でぃするだいありー?

そんな気はないんだれど、でぃすっちゃってる。 でぃすでれ?

読物 『満州国演義』

手記によれば「馳ノワール」なる語を初めて目にしたのは2005年11月のこと、単行本『楽園の眠り』の帯による。以来、その語を想起するたびに連想する名がある。船戸与一だ。

船戸与一作品との出会いは柳澤一明による漫画作品『猛き箱舟』で、馳星周との出会いに先んずることおよそ10年前となる。第一話の衝撃に打ちのめされて漫画連載を待ち切れず、原作小説を手に取った。熱冷めやらぬままに『山猫の夏』『伝説なき地』と読んで作風を理解し、『蝦夷地別件』で離れた。
既読作品の中に、同じ題材を扱ったものはない。似ているのは物語の構造である。それに飽きが来たためだ。

蝦夷地別件』が1995年の発刊となるので、14年ぶりだ。
着手に至るきっかけは「馬賊」というキーワードによるもので、サーチエンジンにヒットしたことによる。『満州国演義』という銘に剣呑なるものを覚えつつも、地元の図書館に既刊全巻が貸出可能状態にあるとわかれば、縁を感じずにはいられない。

この物語は、四人の兄弟の視点から語られる。外務省官僚の長男、馬賊の次男、軍人の三男、そして時代に翻弄される若者の代表格としての四男。彼らの視点で満州を眺め渡していく。
満州事変前夜からはじまり、五巻終了時点で南京に至る。巻頭に掲載されている地図は巻をおって縮尺をさげてゆき、どこまでゆくのか現時点では不明である。

久々に、乾きに苛まれる作品に出あった観があるが、たったひとしずくの猛毒で物語を激変させる作家なので、予断は許されない。

新潮社の著者インタビュー