でぃするだいありー?

そんな気はないんだれど、でぃすっちゃってる。 でぃすでれ?

夢の宇宙誌

 ところで、たまたま古新聞の切り抜きを集めたスクラップ・ブックをぱらぱら繰っていると、このわたしの直観をまさに裏書するような、ある科学的な仮説を立てた学者の見解を紹介した記事が偶然にも出てきて、わたしの目には、その古新聞の小さな囲み蘭に否応なく吸いつけられてしまったのだ。すなわち、そこに見出されたロイター通信の報道によれば、「米国イリノイ大学工学部のフェルスター教授は、このほど米国の科学雑誌”サイエンス”に寄稿した論文で、あと六十六年後の西暦二〇二六年に、人類最後の日がやってくるだろうと予言した」というのである。
 同博士は人口増加について数学的計算をした結果、かかる結論を出したもので、問題の西暦二〇二六年には、人口はほとんど無限にまで殖え、人間はみずからを殺戮せざるを得ない状況にまで追いつめられる。博士の説によると、人類は飢えや放射能や、病気や天災などでむやみに滅びるものではなく、むしろ逆に、人口が増えすぎて押し合いへし合いの結果として絶滅する、というのである。
 ――とすれば、この人類の怖ろしい未来風景は、わたしが先ほど述べた、レミングや羚羊などの狂気の運命をそっくりそのまま模倣したものにほかならず、より高次の超越的な目から見れば、六十六年後の人間の運命も、全く動物たちの盲目的な行動と相似の形態をあらわすものと言えはしないだろうか。いかにも小動物の集団的自殺のイメージには、人類絶滅のイメージがひな形として隠されていたのであった。

P.228

 昭和五十九年初版、同六十三年七版発行の河出文庫版を入手したのは、高校生の時だったか、大学生の時だったか。数十年ぶりに読んでみれば、なんとなく読んだ記憶しか蘇らない。当時の自分に響くものがあまりなかったのだろう。

断捨離にて見いだし、まるで覚えていないので処分する前に再読する気になった。
読み返してみても、知識の蒐集としては興味深くもあるが、やはり響いてくるものはない。引用した内容は、現在から六年後の未来を一九六〇年代に占ったもので、人口が単純増加をしていく未来予想図に微笑ましさを禁じ得ない。