でぃするだいありー?

そんな気はないんだれど、でぃすっちゃってる。 でぃすでれ?

海の地政学

米軍の元海軍提督、NATO軍司令を務めた人物による著書。

アメリカの鏡・日本』において、以下のような表現がある。

 この時期(注:ペリーによる開港)から十九世紀末までの日本はいわば半植民地だった。欧米列強の代表たちは、貿易のすべてを管理し、税率と価格を決め、沿岸通行を独占し、日本の金を吸い取り、九十九年間の租借権と治外法権に守られて日本に住んでいたのだ。列強は自分たちの植民地と中国で享受する特権的立場を日本にもち込んだ。この期間、ほぼ四十五年間にわたって、日本は欧米列強の直接「指導」のもとで「改革され、再教育された」のだ。

 日清戦争のあと、欧米はこの生徒の卒業を認定し、一八九九年に「不平等条約」最後の条項が書き改められた。列強は特権を返上し、日本は高校卒業証書をいただいて大人の仲間入りをした。そして、日露戦争で、日本は大学卒業論文を見事に書き終える。一九一九年、第一次世界大戦後の講和条約を協議するパリ会議は、日本がインターンを無事終えたことを認めた。日本は米英仏伊と並ぶ輝かしき「五大国」、すなわち時の「平和愛好国」の一員となった。日本は優等賞をもあって卒業したのである。

 

P.226

個人的にはこの表現が、少なくとも当時の世界情勢を物語るものとして気に入っている。「世界」の規範に従った行為を批判するのならば、その導き手や共犯者もまた批判されるべきであり、ゆえに隣国の主張は物乞いに過ぎないという印象が拭いえない。

本書では、欧米の植民地支配については「遺憾ながら現在までも返済できていない負の遺産」、旧大日本帝国によるそれは「サメのごとく」と表現している。アメリカ人らしい視点といえよう。さらにいえば著者は、イギリスに対してやや思うところがあるが、フランスに対してはあまりないというスタンスが透けて見える。

そんな表現を目にしたものだから平静に読めるわけもなく、しかし、最終章は米海軍をもっと強化しようと結んでいるので、生暖かい評価をできるような落ち着きを取り戻した。

カリブ海ソマリア沖、北極海における状況について知ることができたので、興味へのインデックスという点では役に立った。しかし、『海の地政学』という邦題にふさわしい内容かといえば、「元軍人の知見」という点をより強く補強すべきだと思え、間違いではないが詐欺っぽいという印象が残った。