でぃするだいありー?

そんな気はないんだれど、でぃすっちゃってる。 でぃすでれ?

クロコディル 一八世紀パリを襲った鰐の怪物

「パリを舞台にした帝都物語」なんてレビューを見かけたものだから、つい読んでしまった。

とんでもない。

既知の読物として印象がかぶるのはクロウリーの『ムーンチャイルド』、ダンテの『神曲』。読者をけむに巻く描写が前者を彷彿とさせ、著者が念頭に置いて記したのではないかと思えるのが後者。

ゲテモノだろうとテツガクだろうと読んで面白ければよいが、善と悪の対決というわかりやすい物語構造で、悪側がタイムボカンシリーズの三バカのような立ち回りしかできず、善側の行く末に微塵の不安もスリルも感じることはできず、勧善懲悪というにもアホらしい、予定調和やデウス・エクス・マキナという言葉を使うことさえ躊躇う筋書きをなんと評すればよいか。

学生時代にTRPGを嗜んだが、サークル内に一人、ユニークな評価を受けるGMが存在した。彼のマスタリングに冠されたのは「NPCの大冒険」。プレイヤーは物語の傍観を強いられ、事態を進展させるのは常にNPCというものである。このようなゲームスタイルが好まれるはずもなく、やがて参加する者が誰もいなくなった。
この物語に敢えてジャンルを付与するならばそれしかない。

ガジェットだけを見れば出版当時としては奇想天外なアレコレだったに違いないが、現代においてはそれ以上の感慨を抱けるものではない。ただ一つ、『ムレムの書』に登場する「評議会」の元ネタっぽいもの(違うかもしれないが)には、ちょっと心動かされるものがあった。