でぃするだいありー?

そんな気はないんだれど、でぃすっちゃってる。 でぃすでれ?

炎の戦士クーフリン/黄金の騎士フィン・マックール

ローズマリー・サトクリフの作品を初めて読んだのは2015年のこと、そのときに『第九軍団のワシ』 『銀の枝』『ともしびをかかげて』を読んだことが備忘録にある。備忘録にはまた同著のアーサー王伝説を読んでみたい旨が記されているが、失念していた。

ケルトっぽいものに初めて触れたのはいつのことだろう。思い返してみるとたぶん『聖戦士ダンバイン』のダーナ・オシーが初であろう。そのときはそうとは知らなかったにせよ。
意識して獲得した知識としてはたぶんTRPGをやるようになってからで、その頃に書籍から知ったクー・フーリンは「ケルト神話に登場する妖精」というようなものだったと記憶している。妖精という言葉が示すものに対する認識が狭かった当時、いわゆるフェアリー的な印象を得たものだった。紹介した側はたぶんトールキンのエルフ的な像を思い描いていたのだろうが、読者たる当方には伝わってこなかった。そのフェアリー的イメージが長らくケルトの英雄に対する当方の認識を固定してしまい、後にメガテンFateで知った時に違和感を覚える遠因となるがそれはさておき。

本書を知ったきっかけはTwitterに流れてきた投稿で、FGOをやっているからという理由で読んでみる気になった。前述のとおり、クー・フーリンに対する印象は固定的かつ限定的で、なんらかのかたちで一度は総括しておきたいと思ってもいたからである。

クー・フーリン、本書の呼称ではクーフリンといえばゲイ・ボルグという魔槍の使い手であることは、その名を知る者であれば概ね了解しているであろう。当方の認識にもそれはある。しかし、その槍を振るったのは人生で二度きりという逸話は知らなかった。
また、彼には狂戦士としての逸話もあり、そのさまは「片目が引っ込み、片目が飛び出し、頭頂から黒い血煙を噴き出して敵を攪乱し、額からは英雄光と呼ばれる光を放つ」と描写されている。永井豪作品に登場する「デーモン化しつつある小物悪役の面」であろうか。なんとも凄まじい英雄もあったものだ。英雄光についてはフィン・マックールもその最期の戦いにおいて額に宿している。そのあたりの描写からは『ルーンの杖秘録』を彷彿とさせられた。
順風満帆な人生で、苦難を才気と膂力で切り抜けてきた英雄はだが、女王メーブ(本書の呼称より)の策に堕ち、運命を受け入れて死地に至る。クライマックスの描写は実に素晴らしく、英雄の死とはかくあらんという悲哀を醸している。

フィン・マックールについては、その名前とフィオナ騎士団がセットである・・・そんなふうに聞いた覚えがあるという程度の知識しか持ち合わせていなかった。ディルムッド・オディナ、本書の呼称ではディアミッド・オダイナも同様で、妖精の黒子は聞いたことがあるかもしれないという程度のものだった。
フィンの章冒頭にサトクリフによる前書きがある。ケルトの物語は口伝で伝えられていて、炉端でも語り継がれてきた人気作品。いろんな人が好き勝手にエピソードを混ぜちゃってる。フィオナ騎士団の物語は特に二次創作が過ぎて収拾がついていないので、なるべく矛盾を排して書くけど、この話も二次創作だからそのつもりで読んでね。
そのつもりで生温かく読んでいたためか、それゆえ物語に気をやりすぎることなく読めたためか、この物語では特に風物描写の筆の冴えにはっとさせられることが多かった。
詩的な表現と評するにふさわしいが気負いなく自然である。気を張った「詩的」な文章にはうんざりさせられる体質だが、目にした風景を語るとしたらこうであろうという表現には共感しか覚えない。

この二つの物語を読んで強く感じるのは、アイルランド発祥の物語が与えてきた影響である。当方が有する限定された認識の中でも、トールキンムアコック永野護について漠然と認識を更新した。知らなくてもよいことではあるが、知れば曰く言い難い興奮が身の内に宿る。

 

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読書の記録にあたってAmazonのリンクを利用してきたのは、それ以前まで個人的に記録していたデータベースにISBNの項目が欠落していることを問題視していたためで、書名や著者名だけでは該当する書籍に辿り着くことができないケースがあったことに由来する。その原因としては絶版や、出版社・レーベルを変えての再出版などがあげられる。また、古い書籍にはISBNが記されていないなど、一意に特定するために十分ではなく、ISBNを追記すれば解決するという問題でもなかった。
これらの問題の解決のため、Amazonを書籍データベースとして活用できないかと考えて使ってきたわけだが、近年、欠品によるリンク切れや、本書のように価格の高い古書でしかリンクを見つけられないケースが見受けられるようになり、再度代替手段を検討していた。国会図書館はどうだろうとリンクを張ってみたが、書籍名や書影が載らないのでイマイチ。