でぃするだいありー?

そんな気はないんだれど、でぃすっちゃってる。 でぃすでれ?

サピエンス全史

 哲学者や思想家や預言者たちは何千年にもわたって、貨幣に汚名を着せ、お金のことを諸悪の根源と呼んできた。それは当たっているのかもしれないが、貨幣は人類の寛容性の極みでもある。貨幣は言語や国家の法律、文化の基準、宗教的信仰、社会習慣よりも心が広い。貨幣は人間が生み出した信頼制度のうち、ほぼどんな文化の間の溝をも埋め、宗教や性別、人種、年齢、性的指向に基づいて差別することのない唯一のものだ。貨幣のおかげで、見ず知らずで信頼し合っていない人どうしでも、効果的に協力できる。

――上巻 P.230

――植民地を先住民とイギリスから守るためにWICによって築かれた防壁ウォールは、今日では世界一有名な通り、すなわちウォール街の舗装の下に残っている。

――下巻 P.149

 ミシシッピ・バブルは歴史上屈指の派手な金融破綻だった。王政フランスの国家金融制度は打撃から完全に回復することはついになかった。――中略――増大していく負債を返済するために、フランス王はさらに多くのお金を、さらに高い金利で借りた。その結果、一七八〇年代には、祖父の死によって王位に就いていたルイ一六世は、王室の年間予算の半分が借金の利息の支払いに充てられ、自分が破産に向かって進んでいることを知った。一七八九年、ルイ一六世は不本意ながら、フランスの議会にあたる三部会を一世紀半ぶりに召集し、この危機の解決策を見つけようとした。これを機にフランス革命が始まった。

――下巻 P.151


訳者あとがきによると、三〇か国以上で刊行されて世界中でベストセラーとなったそうである。
これが事実ならば、FGOの星5鯖ギルガメッシュはただちに星六となり、不死の特性がなんらかの形で実装されるべきだ。

閑話休題

人類史という多面体において 『銃・病原菌・鉄』を物質的側面とするならば、本書は精神的側面を描写したものだ。科学的というよりは哲学的である。 『銃・病原菌・鉄』には強く啓蒙されたと感じるのだが、本書にはそうでもないというか、そうでもなくないと思うのだが、個人的に哲学に抱いているなんというかアレなカンジのために眉をひそめながら読み進めることになったからか、デカルチャーというほどの衝撃は得られなかった。

むろん、本書から新しく得た概念はある。神と株式会社を同列に扱うやり方は、個人的にごく小さいスケールで似たような印象を抱いたことはあるが、これまでに目にしたことがない。
個人的なそれとは、社会人になって数年たったころに漠然と感じたことで深くは追及しなかったのだが、大人はいうほど大人ではないと感じたこととあわせて、会社というものがごっこ遊びのようなものと感じられたことだ。仕事に熱意をもっている方があまり多くなかったからかもしれない。

本書のキモは、ホモ・サピエンスという種が他の人類種に長じた点として「妄想ちから」を挙げていることだ。幻想というくくりで同類項を取ると、神と株式会社を同列に扱うことができる。幻想はありとあらゆるものに適用され、民主主義とか資本主義とか民族主義とか通貨とかにも適用できる。
それを信じることで他者とスムーズに協調できるものを生み出した精神性が、人類が他者を圧し得た力であるという主張だ。

人類にはこれまでいくつかの革新がおとずれたという。産業革命のほかに、認知革命と農業革命とが大きなパラダイムシフトになったと。本書は認知革命に重きを置いているようだ。本書を、科学を基盤とした一般向け論説というよりは哲学書と思わせるのはそういうあたりに起因しているのかもしれない。

面白い本ではあったが『銃・病原菌・鉄』をより推したい。

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