でぃするだいありー?

そんな気はないんだれど、でぃすっちゃってる。 でぃすでれ?

読物 『19世紀のロンドンはどんな匂いがしたのだろう』

門外漢が雑学的好奇心を満たすのに必要十分な内容であるが、本文中よく引き合いに出される英文学作品に親しんでいた方がよりいっそう楽しめるであろうという内容でもある。

巻末に記載されている数百頁分の辞書は『指輪物語』の冒頭「パイプ草について」を思わせるが、巻末にあるだけ救いといえよう。

文学というものを忌避するようになったのは、三流大学の理工学部に進学した我が身に課された一般教養とやらの必修科目に英文学を選択してからのことである。

講義をまともに聴いていなかったので、ひょっとしたらためになることをいっていたかもしれないが、文学というものを読み解くことはなにやら難しい作法があるらしいと思い知らされた気がして、文学は読むまいと思うようになっただけだった。

本書が述べるように「物語作品には描かれた時代の風物が記されている」ことに頷かされてみれば多少の興味を持って忌避してきたものに向き合う気にもなり、昨今、文学はラノベ、などという言葉を耳にするようになり、なんとなくそうかもしれないと思うようになれば忌避してきたことも馬鹿らしく思えて、なにか読んでみる気になった。

オリバー・ツイスト』。

その名を聞いたことはあれ、あらすじすらも知らなかったのだが、ひとことでいうなら、小公女系の名作劇場である。個人的にはしかし、ナンシー嬢の悲劇と読んだ。

新聞連載という形態で発表されたというこの作品、物語の転がり具合が読者の反応によって変化したかどうかは知らないが、偏愛ではないと思える作者の愛が、脇役をキーパーソンに押し上げたような印象はある。物語の核心となるエピソードに後付けされた感が拭い得なければ、Vガンでカテジナが狂わされたように、物語を終局へ導くためのスケープゴートが必要だったのだろうと思わなくもない。

こんなことを思うのは、前半のオリバーかわいそう物語に多少なりとも移入してしまった反動に違いない。

さて、読む動機となった風物についてはどうかというと、素養のなさから真偽の判断はできないが、ランクマーの都のようなイギリスあるいはロンドンを堪能できる。

身内にヨーロッパびいきがいるせいか、綺麗なヨーロッパではなく、汚いヨーロッパの風物に触れる機会があると我が意を得たりという気になる。個人的には好きも嫌いもないつもりなんだけれど、綺麗な部分だけを見てヨーロッパ万歳なんていう捉え方をしてるのを間近に見ると、なんだか反発したくなる。