でぃするだいありー?

そんな気はないんだれど、でぃすっちゃってる。 でぃすでれ?

読物 『新版 進化するナンバ 実践 常歩剣道』

その昔、『グラップラー刃牙』で御殿手が紹介された頃のこと。

野球をやっているが格闘技は未経験という当時の職場の同僚とともに、昼食を買い出しに職場近辺のコンビニに向った。これみよがしに歩行者用の白線上を踏み歩く同僚の姿は、それを知る者には、なにが彼の厨二心を刺激したのか自明だった。

たまたま同道することになった職場の理事が何をしているのかと彼に問い、同僚は正中線を揺らさないように歩いているのですと答えた。それをするとどうなるの。バランスを崩さなくなります。ほう、と呟き、理事は同僚を軽く押した。他愛もなく、同僚はよろけた。

それから十数年、ズボンを片脚着脱しようとしているときのような一見して不安定な格好でも、きちんと重心を乗せていれば押されても容易には崩れないことを体感したのは余談である。

本書によれば、一直線上を歩くような歩き方は、少なくとも武術には不適合であろうという。

常足と書いて「なみあし」と呼ぶ。いわゆるナンバの、本書における名称である。常足は、一直線上ではなく、二軸――二本の直線上を動くという。一見してガニマタ歩き、といえばよかろうか。

ナンバ歩きという概念と初めて遭遇したのは山本貴嗣の『SABER CATS』で、その中には日本刀の運用に関わる表現もあった。本書においては、常足を剣道に還元するにあたって、これと反する運用を示しているようにみえる。

たかがマンガと、剣道を身近に行ってきた方の著書と、どちらに信を置くか。

剣道といえばガッコの体育の授業くらいしか経験のない身では判断する術を持たないが、静的な宇宙を信仰するのと同じレベルで前者に信を置きたい。

本書における常足を行う身体を作る方法論は、ここ数年、個人的に工夫しているところとマッチする部分があるので、参考にしたいと思う。

「剣道は古武道の理合を失っている(意訳)」というようなことを聞いたのはどこでだったか、ゆえに剣道に手がかりを求めることは諦めていたのだが、市井人の一考察という印象を拭いえないにせよ、興味深い内容であったことは間違いない。