でぃするだいありー?

そんな気はないんだれど、でぃすっちゃってる。 でぃすでれ?

読物 『真相 ”切り裂きジャック”は誰なのか?』

――首都警察が設立されたとき、警官はできるだけ軍隊的な印象をさけるため、ブルーのコートとズボンに、ウサギ革のシルクハットというかっこうをした。逮捕した犯罪者に頭をなぐられたときのため、シルクハットは鋼鉄のフレームで補強してあり、柵や塀をのりこえたり窓から侵入したりするときに、踏み台として使うこともできた。

上巻 P.164

――よく知られているように、犯罪者が処刑されるとき赤いネッカチーフをつけていれば、それは彼がだれにも真相をあかさず、邪悪な秘密を墓までもっていくことをあらわしていた。

下巻 P.197

切り裂きジャック”を知ったのは、小学生の頃だったと思う。『小学X年生』は、優れた情報誌であったということか。それ以後、事件をモチーフにした作品にも幾つか触れたと思うが、最も印象に残っているのは『ジョジョの奇妙な冒険』第一部である。つまり、その程度の素養しかない。

特に縁もなく過ごしていたが、今から二十年近く前のこと、知人がデザインした同人TRPGヴィクトリア朝を舞台としたセッションに参加したとき、「その後”切り裂きジャック”となるキャラクター」をやったことがある。ジャックのことも事件のこともようしらんのに、よくやったもんだ。

そのゲームでは、キャラクターがいわゆる超能力的なものを一種類だけ身につけることができる。詳細はどうでもいいのだが、我がキャラクターはフランス人で、「元素変換能力」というわけわからん能力を持ち、「フロギストロン理論」なる間違った自論を提唱する科学者だった。ディレクター(TRPGでいうところのゲームマスター)は「フロギストンでわ?」とつっこんでくれたが、名称の間違いも含めて作為であると返答した。

”Act with Tarot”、AwTというこのシステムにおけるセッションは、大筋はあるものの、ほぼアドリブで進行する。場面をタロットで占い、それにプレイヤーたち(本システムではアクターという)が即興であわせる。これまた詳細はどうでもいいのだが、セッションの最後で我がキャラクターは打ちのめされ、イギリス人に恨みを募らせることになった。セッション開始からいかにそうするかを考えていたわけで、狙っていたにせよ、なるべくしてそうなっていったように感じられたことが記憶に残っている。

セッション終了後、「このキャラクターは、後に”切り裂きジャック”となる」かもしれないと、個人的エンディングテロップを独白した。ディレクターを含めた一同を驚かせてやろうと思って事前に相談したりしていなかったから、これを受け入れてくれるかどうかは賭けだった。

この思いつきを、ディレクターはノリノリで受け入れてくれた。「超能力が存在する世界で”切り裂きジャック”をどうすべきか考えていた。ただの猟奇殺人鬼ではインパクトがない。『元素変換能力』で飛行船を爆破する”切り裂きジャック”は面白い」というようなことを述べ、リアクション付きで飛行船爆破を妄想していた。非常に、ノリノリであった。

さておき。

当時の警察の捜査能力は、科学的にも経験的にも、それは別としても観察力も未熟であった。

切り裂きジャックの犯罪は現代的な犯罪であり、当時の警察には解決能力はもちえなかった。

切り裂きジャックはこのように被害者を殺害した。

それは著者が真犯人と確信する、ある人物の性癖と非常に酷似している。

そんなカンジの論調が繰り返しずっと続く。警察をdisり、それは仕方のないことだったと擁護し、現代ならばXXXという手法があるから手がかりをもっと得られたであろうという。それはわかった、もういいから、そんなカンジ。

同じ事件が何度も語られる。”切り裂きジャック”事件に詳しいものならば、ひとつのケースを補強するための繰り返し論述と受け止めるのだろうか。もっとまとめろよ、ってなカンジ。

しかしながら、ヴィクトリア朝時代の雰囲気を知るにはいい内容だと思う。

プロファイリングというのは、けっこう思い込みが入るものなのではないか。

そんなことを思わされつつも、説得力のある内容で、真偽はともかく興味深いものではあった。

ジョジョの奇妙な冒険』における”切り裂きジャック”の扱いから、荒木飛呂彦は、本書が「真犯人」とする人物と人となりを知っていたかもしれない(が、そうであるとは考えていなかっただろう)。この「真犯人」はかぎりなくディオ・ブランドーを思わせる。

有名な作家らしく、そういえば名前を聞いたことがあるような気がしないでもないが、他の作品は読んだことがない。他の作品も、こんなカンジなのだろうか。