でぃするだいありー?

そんな気はないんだれど、でぃすっちゃってる。 でぃすでれ?

リヴァイアサン・シリーズ

かつて、翻訳小説は神であった。ハヤカワFTは聖典であり、ハズレはなかった。
それが変わったと感じたのはいつのことだったか。ハリーポッターより前のような気がする。ハヤカワだけに限らず、創元も似たようなところ、つまり半端にライトな作品が増えて、趣味にあわなくなった。ハリーポッター後には、時々趣味にあう翻訳小説を出してくれる出版社はあったが、もはや神はいなくなっていた。

久々に一気に通読できる本に巡り合えたというのが最大の読後感。
スチームパンクというのは大仰な仕掛けで効率悪く自動化されるものと理解している。ゆえに本書は、謳い文句ほどにはスチームパンクではないと感じられる。『機神兵団』的な、「まあそれっぽいカンジ?」でしかない。『ベヒモス』では著者もそれに気付いたのかスチームな描写を取り入れたようだが、『ゴリアテ』ではもうどうでもよくなっている。蒸気どころじゃない騒ぎだからこの辺をつつくのは本意ではない。スチームパンクというジャンル名が作品の推しとして用いられているので、そのあたりの感想というところ。個人的には『ねじまき少女』のジャンルに近いと感じる。
作中における科学技術の進歩と時代感に不一致感があり、「映像」という技術の萌芽期に「動画」という訳語(原典もそうなのかもしれないが)が用いられていることにコレジャナイ感が強く残るが、純粋に楽しむには余計な知識を蓄えすぎていると自覚しながらも、近頃読んだ『大英帝国の歴史』とリンクして、第一次世界大戦が世界大戦であるところをようやく認識したというところ。ガッコのベンキョでは第一次世界大戦はヨーロッパの争乱という印象のみあり、植民地とリンクできなかった。

大英帝国の歴史』には、イギリスの紳士的な自己擁護がわりと台無しにしているという印象を持つ。自分のトコの帝国もけっこうやらかしてますけど、他にもっとひどい帝国、いくつかあるよね?という印象のすりかえ操作が許しがたい。印象操作で数字を持ち出しているが、その数字は比較にならないほど先輩の方が多い。民間人の虐殺だって経験豊富だ。なのに、自身の印象はあんまり悪くならないような配慮がなされている。400年搾取し続けて最後の数十年で我に返った国が、最初の数十年で酷いことをした国を貶めるという勇気。さすが、自分の舌の枚数を覚えていない国である。
世界の果てからやってきて、無知に付け込んだり砲艦で交渉して不平等条約を結んだり、侵略してくるというのが国際社会と理解されたなら、対抗する勢力も出てくるだろう。この本でも帝国のライバルは帝国といっている。因果関係を整理せよといいたい。
欧米が残した世界の禍根は現在も癒えていない。帝国主義はまだ清算されていない。